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ゴースターズ株式会社 ✕ テンボカネート OEM事例インタビュー

キーケースと財布の写真に日本語のビジネスメッセージが重なる。

欧州トップ職人との協業で培ったスニーカーブランドが、バッグ・レザーグッズという新領域に踏み出す際に直面した「ロットの壁」「職人の壁」「海外生産の見えないコスト」——。

その三重苦を、台東区発のバッグOEMメーカー・テンボカネートとの協業によって一つずつ解きほぐしていった経緯を、両社に語ってもらいました。

登場人物

内藤正徳(ゴースターズ株式会社 ディレクター)

内藤正徳(ゴースターズ株式会社 ディレクター)

内藤正徳(ゴースターズ株式会社 ディレクター)

欧州の職人・工房との長年のネットワークをもとにスニーカーブランドを展開。素材へのこだわりとブランドの世界観を軸に商品開発を牽引。新たなカテゴリとしてバッグ・レザーグッズへの参入を主導し、テンボカネートとの協業でオリジナルキーケースを商品化。 

田辺健人(株式会社テンボカネート)

内藤正徳(ゴースターズ株式会社 ディレクター)

内藤正徳(ゴースターズ株式会社 ディレクター)

2015年にテンボカネートを創業。百貨店PB、国内外のデザイナーズブランド、スポーツメーカーなど幅広いクライアントのバッグ・革小物のOEM・ODMを手がける。国内生産にこだわり、ファッショントレンドを踏まえた企画提案力を強みとする。 

01|「次のカテゴリ」に踏み出せなかった、三つの壁

── ゴースターズさんは欧州の職人との協業でスニーカーを展開されてきました。バッグ・レザーグッズへの参入を考え始めたきっかけを教えてください。


内藤さん(ゴースターズ)

私たちのブランドは創業当初から、欧州のトップクラスの職人や工房と直接組んでスニーカーをつくってきました。素材の選定から縫製まで徹底的にこだわる——それが私たちのDNAです。バッグやレザーグッズは、そのDNAを別のカテゴリで表現できる領域として以前から注目していました。ただ、スニーカーで積み上げてきたものとはまったく異なるサプライチェーンが必要になる。「どこと組むか」が勝負だと思っていましたね。


── 具体的にどのような課題に直面しましたか。


内藤さん(ゴースターズ)

大きく三つありました。一つ目は、新規カテゴリゆえに最初から大きな投資ができないということです。スニーカーでは欧州の職人と長年の信頼関係があるので、ある程度ロットをまとめて発注できます。でもバッグは全くのゼロベース。PDCAを回しながら軌道に乗せていくためには、小ロットから始められる環境が絶対条件でした。


二つ目は、国内の職人さんとの会話の中で感じた「提案の温度差」です。技術は本当に素晴らしい。でも、いざ商品企画を持ち込むと、今の消費者が何を求めているかという視点が抜けていることが何度かありました。「職人目線」と「マーケット目線」のすり合わせに毎回苦労していたんです。


三つ目が、海外工場との兼ね合いです。中国など海外の生産拠点は単価は魅力的ですが、最低ロットが大きい。トータルのキャッシュアウトが膨らんで、結果的に「博打」に近い発注になってしまう。加えて、見えないコストがあります。検品で一定数の不具合品が混入することは想定内なのですが、その対応コストは表面的な見積もりには出てきません。フタを開けて初めて「こんなにかかったのか」となる。


「小ロット・トレンド感・見えないコストの排除」——この三つを同時に解決できるパートナーを探していた。

02|なぜ、テンボカネートを選んだのか

── テンボカネートさんを知ったきっかけと、最初の印象を教えてください。


内藤さん(ゴースターズ)

知人のデザイナーから「台東区に面白いバッグメーカーがいる」と紹介してもらったのが最初です。正直、最初は「街のOEM工場」くらいのイメージで軽い気持ちでアポを取りました。ところが実際に会ってみると、田辺さんが持ってきた事例の幅が想像をはるかに超えていた。百貨店のPBから国内外のデザイナーズブランドまで、ジャンルも価格帯も全く違うプロジェクトをこなしてきている。これは単なる下請け工場じゃないなと。


── 田辺さんから見て、最初のご相談でどのような印象を持ちましたか。

田辺(テンボカネート)

内藤さんが最初に見せてくださったブランドのルック、参照しているヨーロッパの工房の写真——それだけで、どういう世界観を大切にしているか伝わってきました。「トレンドを追いかけるブランドじゃない、軸がある」という印象です。だからこそ、私たちのアプローチと合うと直感しました。私たちは「何をつくりたいか」よりも先に「どんな存在でありたいか」を聞くことにしているんですが、内藤さんの答えは非常にクリアでした。


── 最終的にテンボカネートさんへの発注を決めた理由は何でしたか。

内藤さん(ゴースターズ)

決め手は三つです。一つは、ロット50個から対応してもらえること。これは国内生産ならではで、海外工場では考えられない柔軟さです。二つ目は、打ち合わせのたびに「事例」と「理由」がセットで出てくること。田辺さんは『このトレンドだからこの素材が合う』というように、提案の背景にあるファッションの文脈を必ず説明してくれる。提案書を見るのが毎回楽しみになりました。三つ目が、国内生産による品質の安定です。検品工程が見える、不具合が出た際のコミュニケーションが取れる——これは海外生産では得られなかった安心感です。


国内・小ロット・トレンドに精通した提案力。ゴースターズが求めていた条件がテンボカネートで揃っていた。

03|ものづくりの現場——キーケース誕生の舞台裏

── 実際の開発プロセスはどのように進みましたか。


田辺(テンボカネート)

最初のヒアリングで内藤さんから出てきたキーワードは「素材の誠実さ」「主張しすぎないエレガンス」「長く使えること」の三つでした。そこから私たちが提案したのはキーケースです。財布よりも日常的な接触頻度が高く、ブランドの世界観を毎日体験してもらえるアイテムです。スニーカーと一緒に持ち歩くシーンでも違和感がない。


内藤さん(ゴースターズ)

革の選定には特に時間をかけました。田辺さんが三種類の革のサンプルを持ってきてくれて——それぞれ産地も鞣し方も違う——手に取った瞬間から差がわかるんです。触感、発色、経年変化のイメージ。説明を聞きながら自分たちのブランドに重ねると、一つに絞れました。それはイタリアのタンナーの革でした。


田辺(テンボカネート)

金具の選択も大事なポイントです。キーホルダーリングやDカンの素材感一つで製品の印象がガラリと変わります。ゴースターズさんのブランドは「主張しすぎない」が軸なので、光沢を抑えた真鍮の様な見た目のBZ仕上げを提案しました。光を拾いすぎないから、革の風合いが主役になる。こういう細部の議論がとても楽しかったですね。


── 試作から本生産まで、苦労した点はありましたか。


内藤さん(ゴースターズ)

試作の第一弾を見たとき、キーリングのピッチ(間隔)が少しタイトだなと感じました。すぐに田辺さんに伝えると、翌週には修正サンプルが届いた。このスピード感は国内生産でないと難しい。海外だったら修正の往復で2〜3ヶ月は飛んでいたと思います。


田辺(テンボカネート)

私たちは試作段階でのフィードバックを非常に大切にしています。一発で完璧な試作は存在しないので、修正ループを素早く回すこと——これが品質に直結します。国内生産の最大の強みはここだと思っていて、東京の工房とすぐ話せる距離感が、そのスピードを支えています。


試作から本生産まで約2〜3ヶ月。フィードバックを翌週に反映できる国内生産の機動力が、ブランドらしさの精度を上げた。

04|協業の成果——ブランドの「新しい顔」が生まれた

── 完成したキーケースを見た最初の感想を教えてください。


内藤さん(ゴースターズ)

「私たちのブランドだ」と思いました。これは最大の褒め言葉です。私が何百もある部材の選択肢を自分で一つ一つ選んだわけじゃない。でも、出来上がったものにはちゃんとゴースターズの空気感がある。それは田辺さんが私たちの世界観を正確に理解した上で選別してくれたからだと思います。


田辺(テンボカネート)

正直なところ、内藤さんの反応を聞いてほっとしました(笑)。私たちの役割は「クライアントの言葉にならない美意識を、形に落とし込む」ことです。仕様書通りに作るのは当然として、その先の「ブランドとして正しいか」という判断を一緒にしていけるか——そこが私たちが価値を出せるかどうかの境目だと思っています。


── ビジネス面での手応えはいかがですか。


内藤さん(ゴースターズ)

小ロットから始めたことで、まず市場の反応を確かめられました。スニーカーのお客さまがどう受け取ってくれるか、どの価格帯が響くか。博打的な全量発注では得られなかったフィードバックが、着実に蓄積されています。次のロットでは素材を一部変更する予定で、まさにPDCAが回り始めた感覚です。

また、キーケースを通じてブランドの「幅」が広がりました。これまで「スニーカーのブランド」と認識されていたところに、「革を知るブランド」という新しい文脈が加わった。それはスニーカーの価値にも逆説的に厚みをもたらしていると感じています。


小ロットでPDCAを回す。それが新カテゴリ参入における、最も低リスクで最も学びの多い方法だった。

05|テンボカネートという選択が意味するもの

 ── テンボカネートさんとの協業で、想定外だった良い点はありましたか。


内藤さん(ゴースターズ)

打ち合わせが「楽しい」ことです(笑)。これは正直、予想していませんでした。田辺さんは毎回、最近のコレクションの話や海外ブランドのトレンドを事例として持ち込んでくれる。インプットを一緒にしている感覚で、単なる発注→納品の関係を超えている。ものづくりへのモチベーションが上がる時間になっています。


田辺(テンボカネート)

私たちは百貨店、デザイナーズブランド、スポーツメーカー、海外ブランドなど本当に多様なクライアントと仕事をしているので、「※この事例がヒントになる」という横展開ができます。(※当然、クライアントさんの未発表の情報に関しては一切口外しません)内藤さんとの打ち合わせでも、まったく別ジャンルのブランドの取り組みがインスピレーションになったことがありました。業界の壁を越えた視点を持ち込めるのが、私たちの強みの一つだと思っています。


── 今後、どのような展開を考えていますか。


内藤さん(ゴースターズ)

キーケースで感触を掴めたので、次はトートバッグやウォレットへの展開を検討しています。いずれも小ロットでテストしながら、データを見て判断するアプローチは変えません。新しいカテゴリへの参入は、いかに早く・安く学ぶかが勝負だと身を持って理解しました。テンボカネートさんとのパートナーシップはその前提になっています。


田辺(テンボカネート)

ゴースターズさんのブランドは「軸」がはっきりしているので、カテゴリが広がるほど私たちの提案も面白くなります。革の色別注やオリジナルのプリント加工、サステナブル素材への切り替えなど、まだお見せできていない選択肢もたくさんあります。長期的なパートナーとして一緒に育っていきたいですね。


「小さく始めて、学びながら大きくする」。新カテゴリ参入に必要なのは大きな投資ではなく、機動力のあるパートナーだった。


    取材を終えて

    新カテゴリへの参入において「ロットの壁」「職人との温度差」「海外生産の見えないコスト」という三重苦に直面していたゴースターズ株式会社が選んだのは、スケールの大きな海外工場でも、技術はあるが市場感覚の薄い職人でもなく、「小ロット・スピード・トレンド感」を三つ揃えたテンボカネートとのパートナーシップでした。


    百貨店PBからデザイナーズブランドまで多様なクライアントと向き合ってきたテンボカネートが持つ横断的な事例と提案力は、単なるOEM工場を超えた「ものづくりの伴走者」としての価値を体現しています。そして、小ロットからPDCAを回せる環境は、新規カテゴリへの参入リスクを最小化しながら、学びを最大化する最も合理的な打ち手でもありました。


    「打ち合わせが楽しい」という内藤さんの言葉は、良いパートナーシップの本質を語っています。仕様通りの製品を届けるだけでなく、ブランドの世界観を深く理解し、共にものづくりを楽しむ——そのプロセスこそが、長期的な協業関係を育む土壌になるのかもしれません。


    ゴースターズ株式会社

    「ビジョナリーのためのプロダクト」をコンセプトに、ポルトガルや日本のクラフトマンとレザースニーカーやバッグを共創するba2(ビーエーツー)を運営。自動車プランナーの経歴を活かした独自の世界観がアパレル業界でも注目を集める。

    Web Site:https://ba2.works/
    Instagram:@ba2sneakers

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